ウェディングという人生の晴れ舞台に、とびきりのサプライズを。そんなオリジナルウェディングの世界における第一人者がテイクアンドギヴ・ニーズ有賀明美さんです。数多くの著名人、マンガのキャラの結婚式まで手がけてきた有賀さんに「感動を生み出す秘訣」についてお聞きしました。

第3話
ウェディングプランナーの枠を超えて。

思いを言葉にすることの価値を広めたい。

─これまでに何件ほどの結婚式を手がけてきましたか?

私自身が直接プランニングした式は500件ほどです。しかし間接的に関わった式は1万3000件以上あります。これほどまで多いのは、T&Gがプランニングを手がけた式については、映像などですべてチェックしてきたからです。たくさんの式を目にするうちに、普段は胸の奥にしまっていて出さない「家族に伝えたいこと」を、誰もが持っていることを強く実感しました。

─「伝えたいこと」とは具体的には何でしょうか。

それは感謝の言葉かもしれませんし、謝罪の言葉かもしれません。お客様によってさまざまですが、胸の奥底にあるものを私たちが引き出し、言葉として伝えてもらうように促す。これが結婚式という晴れ舞台の感動や幸せを高めます。

この仕事を通じて、結婚式の場に限らず人生においても「言葉で伝えること」は重要であると考えるようになりました。自分自身の結婚・出産を通じてその思いはさらに高まり、現在は講演会などで「言葉で伝えることの価値」を発信する活動を精力的に行っています。

─講演会ではどういったお話をされるのですか?

これまで見てきた結婚式でのエピソードをお話しします。たった一言であっても絆を修復できることもあるし、相手を幸せにできる可能性がある。そんな感動的な場面に、誰よりもたくさん立ち会ってきた私だから、説得力のある話ができると思うのです。

私の話をきっかけとして、気持ちを伝える勇気を持ってもらえたら嬉しいですよね。新郎新婦を対象とした講演会が多いのですが、ときには小学生やおじいちゃんおばあちゃん世代を対象としてお話しすることもあります。

─ウェディングプランナーとしての仕事も継続されていますか?

はい。ただウェディングのプランニングよりも、後輩の教育係を担う機会が増えました。ウェディング関係のアドバイザーは社内だけでなく、社外でも担っています。不動産を扱うライフプランナーを対象として、人と向き合うときのポイントや、心の温度の読み取り方をレクチャーしたこともあります。

お客様の「心の温度」を繊細に感じ取り、求めているものを正確に差し出す。私がウェディングプランナーとして培ったスキルは、人と向き合うあらゆる分野に生かせると思っています。

─有賀さんはその能力をどのように身につけられたのでしょうか。

何かで学んだわけではなく、粘り強く人と向き合う過程で磨かれたのでしょうか。もちろん、初めからうまくできたわけではありません。お客様の本当の気持ちを汲み取れずに落胆させてしまった苦い経験もあります。そんな失敗はもう二度としたくありません。真の気持ちを見逃すまいと気をつけているうちに、人の心に反応するアンテナが育まれてきたのでしょう。

大切なのは失敗から目を背けず、粘り強く取り組むことです。それに過去の自分に負けるのは悔しいから、自分がこれまでにプランニングした式より、もっといい式にしたいとも願っています。

迷っている人がいたら、背中を押してあげたい。

─2014年にご自身もご結婚・ご出産されました。

夫とは結婚のときに「ありがとう」「ごめんなさい」「愛してる」という3つの言葉を、思ったらすぐに口に出すという約束を交わしました。月に1回、ロールケーキを食べながら感謝の気持ちを伝える日も設けています。その話を自分のブログに書いたところ、同じようにご夫婦で取り組んでくださる方が大勢いらっしゃったのが印象的です。

「いつも家族のために仕事を頑張ってくれてありがとう」「家のことをやってくれてありがとう」と感謝の気持ちを伝え合ったところ、「ぎくしゃくした関係を修復できた」というエピソードも、たくさん耳にしました。心温まるお話を聞くうちに、「結婚後にも思いを伝え合うイベントがあってもいいのではないか」と思うようになりました。

─具体的にはどういったイベントでしょうか。

海外には、結婚から10年ごとくらいのタイミングで家族の誓いを交わし合う「バウリニューアル」というイベントがあります。「いつもありがとう」「次の10年もよろしく」といった普段は口にする機会がない言葉をかけ合うイベントですので、シャイな日本人には相性がいいはずです。両親がお互いに感謝し合う姿を、子どもが目にすることも、家族関係にいい影響を与えるでしょう。私自身の次のステップでは、バウリニューアルのプランニングを手がけていきたいと思っています。

─なぜそこまで「伝える機会」をつくりたいのでしょうか。

たった一言で「未来を変えられる」といった事例をたくさん見てきたから、背中を押したくなるのだと思います。ウェディングプランナーの仕事を始めるまでは、どちらかというとあまり物事に「深入りしない」「感情移入しない」という人に無関心なタイプだったのですけどね。

家族って、当たり前のように存在するわけではありません。事故や病気で突然いなくなることだってあります。そんな状況を実際に目にしてきたことも、伝える機会をつくりたい原動力のひとつ。手遅れになって後悔するくらいなら、思った瞬間に伝えておいたほうがいいじゃないですか。とはいえ、きっかけがないと難しい。だから背中を押す機会を結婚式のほかにもつくりたいのです。自分でもおせっかいだなとは思いますけどね(笑)。

(企画:池田和助、森谷太一 写真:榊智朗 取材:立古和智)

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フェリス女学院大学卒業後、ハウスウェディングのパイオニアである株式会社テイクアンドギヴ・ニーズに入社。型にはまった結婚式が一般的だった中、「結婚式にサプライズ」という新しい概念をつくりだした「オリジナルウェディング」の先駆者で業界のカリスマ的存在。これまで15年間に渡り1000組以上の国内外のウェディングを監修・担当してきた。そのクリエイティビティーは高く評価され、業界外でも秋元康氏やおちまさと氏とのコラボレーションによる商品開発にも携わる。

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