男前の農家が育てた米を直販する「トラ男」、古民家をシェアする「シェアビレッジ」。これらユニークな事業で地方の活性化に取り組んできたのが武田昌大さんです。「秋田が嫌いだった」という氏が、なぜ地方の課題と向き合うようになったのか。いかにして数々の斬新なアイデアを生み出したのか。これら秘密に迫ります。

第2話
日本をひとつの大きな「村」にしたい

築132年の古民家に魅せられた

─「トラ男」事業を通じて秋田を元気にすることはできましたか?

トラ男事業はあくまで農家のための事業ですから、秋田全体の活性化には結びつきません。僕自身も、トラ男事業を続けて数年が経ってから、そうと気がつきました。
もっと大勢の人を秋田に呼び寄せるには、人が集まる拠点が必要です。そう考えていた矢先に紹介していただいたのが五城目町(秋田県南秋田郡)にある築132年(当時)の古民家でした。

その古民家に足を踏み入れたときのことは忘れられません。不思議なことに、古民家は初めてだったのに「懐かしい」と感じたのです。たちまちその魅力の虜になりました。ところがオーナーは「3カ月後に取り壊す」と言います。
オーナーひとりでは修繕費を負担しきれなくなっていたからです。せっかく素晴らしい古民家に出会ったのに、もうすぐそれが失われてしまう。その日、深夜バスで東京に戻る車中では一睡もできませんでした。どうすればあの古民家を守れるのか。そればかりを考えていました。

新しい形のコミュニティを生み出すことで
古民家を守ろう

─何か名案は浮かびましたか?

オーナーひとりが背負っている負担を、みんなで分担したらどうか。コミュニティの力があれば古民家を守れるのではないか。最初に思いついたのは、そういったアイデアです。それを皮切りに、古民家を中心とした理想のコミュニティについて想像を膨らませていきました。地元のおじいちゃんやおばあちゃんがいれば、都会から来る若者や子どももいて、土間ではライブが催されたりもする。そんな光景が思い浮かんだとき、人々の集う様子が「村」のように思えたのです。それなら古民家を「村」、集まる人々を「村民」に見立てたらどうか。これがシェアビレッジのアイデアの核になります。

そこからは一気に世界観が広がっていきました。村民が村に払うものといえば会費ではなく「年貢」ですよね。都内で「寄り合い」という村民だけの飲み会を開いても楽しそうです。寄り合いで仲間ができたら一緒に「里帰り」で村を訪れてもらいたい。年に一度は、音楽フェス「一揆」を開催してみんなで「村歌(ソング)」を歌おう。これらをすべて夜行バスの中で考えて、翌週にはオーナーにプレゼンして同意を取り付けました。ちなみにプレゼンに立ち会ってくれた地元の若者が、今の運営メンバーです。だからシェアビレッジはアイデアに一日、仲間集めに一週間でスタートしたプロジェクトだったわけです。

クラウドファウンディングを成功させる6つの秘訣

─村民はどうやって募ったのですか?

ここで活用したのが、クラウドファウンディングです。「年貢を納めて村民に?! シェアビレッジ町村、村民1,000人募集」というプロジェクトで、目標金額の100万円を32時間で超え、最終的には617万円を確保できました。ここで知名度アップと、村民集めを同時に達成できたことでプロジェクトに弾みがつきました。

ちなみに僕はクラウドファウンディングを成功させる秘訣は6つあると考えています。まずは自分たちのプロジェクトと親和性の高いクラウドファウンディングを選ぶこと。次に思わずクリックしてしまうプロジェクト名をつけること。多くの人の興味を引くためには、あえて地域名を入れないほか、明確な数字を盛り込むなどの工夫も必要です。タイトルで誘導したら、中のコンテンツを作り込むことも重要。写真も文章もデザインも細部まで詰めます。目標金額をいくらに設定するかも大切です。達成率と実際に手元に残る金額のバランスを考えると100万円がひとつの目安でしょうか。最後は自分たちの社会に対する影響力の見極めです。具体的には、自分たちがSNSを使ってどれくらい情報を拡散できるかを把握します。ここに自信がないのなら、雑誌やテレビなどを通じて情報を発信するなど戦略を練ったほうがいいでしょう。

どこにいても気軽に「里帰り」できる村を

─シェアビレッジの今後の展望を教えてください

日本全国の各エリアに、新たな「村」を作りたいです。そうすれば全国にいる約2000人の会員が、もっと気軽に里帰りできるようなります。実際、2016年にはふたつ目の村を香川県仁尾町に作りました。ここも実に素晴らしいところで、特に日本のウユニ湖と呼ばれる「父母ヶ浜」は文字通り絶景です。僕たちが来たときには人っ子ひとりいない浜辺でしたが、今はいつも大勢の人で賑わうインスタスポットになっています。

今後、北海道など新たなシェアビレッジを作るめどが立っています。最終的には12の拠点をオープンするつもりです。毎月異なる村に暮らして1年を過ごす。そんな新しい生活スタイルを送る人が出てきても面白いですよね。シェアビレッジの村民にとって、日本全体がひとつの大きな村であると感じてもらえるようになれば最高です。

企画:森谷 太一、菅野 秀和     写真:中里 楓     取材:立古 和智     協力:おむすびスタンドANDON

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武田昌大さん

株式会社kedama代表、合同会社ANDON共同代表、内閣府地域活性化伝道師。1985年秋田県生まれ。大学卒業後、大手ゲーム会社に勤務する傍ら、若手米農家集団「トラ男」を結成。2011年、ゲーム会社を退職し、株式会社kedamaを設立。米のネット販売サイトtorao.jpとtoraofamily.comを運営する。2015年には古民家を利用した新ビジネス「シェアビレッジ」をスタート。2016年には内閣府が認定する地域活性化伝道師に選ばれる。NHKクローズアップ現代など多数メディアに出演し、全国各地で地方活性化に関する講演活動も行う。

 

●トラ男: http://www.torao.jp/
●トラ男一家 –toraofamily-:http://toraofamily.com/
●シェアビレッジ:http://sharevillage.jp/
●おむすびスタンドANDON:https://andon.shop/

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