男前の農家が育てた米を直販する「トラ男」、古民家をシェアする「シェアビレッジ」。これらユニークな事業で地方の活性化に取り組んできたのが武田昌大さんです。「秋田が嫌いだった」という氏が、なぜ地方の課題と向き合うようになったのか。いかにして数々の斬新なアイデアを生み出したのか。これら秘密に迫ります。

第3話
大切なのは半径1キロ以内の幸せを見つめること

大切にしたい「価値」を見つけることから始めよう

─「地方創生」が叫ばれる近年、地方を取り巻く状況に変化はありましたか?

「地方創生ブーム」には弊害も少なくありません。僕は地域活性化のためには「3KM2(さんけーえむじじょう)」というプロセスを踏むことが重要だと考えています。「3K」とは「価値」「課題」「解決」のことで、まず自分が大切にしたい価値があって、そこにどんな課題があって、どうすれば解決できるのかを考えます。その上で2つの「M」、「仲間(Member)」と「お金(Money)」を集めるのが筋です。ところが最近はこれに逆行するプロジェクトが少なくありません。地方創生マネーありきで仲間を集め、取って付けたような課題と解決策が提示される。価値は最後まで置き去りにされたままです。このようなプロジェクトでは、補助金が切れると同時にモチベーションも途切れます。これでは何も変えることができません。

─なかには補助金に頼らず、自発的に地方創生のプロジェクトを立ち上げる若者もいませんか?

おっしゃる通りです。そういった若者には僕も期待しています。彼らにひとつアドバイスをするなら「プロジェクトメンバーの構成が重要になる」ということ。地域の外側にいる人材と内側にいる人材とでタッグを組むことが成功への鍵です。新しいアイデアを生み出す外側の人材。それを地域コミュニティに根付かせる内側の人材。両者の協力が不可欠です。

─信頼できる仲間を得るためのコツは?

コツはありません。強いて言えば、直接会って話すことでしょうか。メールやメッセージアプリでのやり取りだけで築ける信頼関係には限界があります。特に地方で何か始めたいのなら、まずは足を運ぶ手間を惜しまないことが肝心です。

何もできない僕の役目は、仕組みを作ること

─武田さんご自身が、今後取り組みたいことは何ですか?

今、僕の生まれ故郷「北秋田市」の活性化に取り組んでいます。この町における最大の資源は、面積の84パーセントを占める森林です。そこからは「秋田材」という良質の木材が採れるのですが、今はそれを一部の伝統工芸にしか生かせていません。そこで「すべての人の暮らしにちょっとした木づかいを」を合言葉に、地元の家具デザイナーや木工家とともに商品開発を進めています。商品を販売するだけでなく、それを買った人が思わず北秋田市を訪れたくなるような仕組みも作るつもりです。

─また武田さんらしいユニークな仕組みになるのでしょうね。

そうなると思います。僕の仕事は面白い仕組みを考えることですから。僕はお米も育てられないし、古民家の管理もできないし、家具だって作れません。その代わり、面白い仕組みを生み出して、人と人をつなげていきたい。いずれにせよ、自分の生まれ育った故郷を活性化させることが現在の目標です。

ワクワクするか。いつでもそれが基準です

─武田さんはなぜ次々にユニークなアイデアを思いつくのでしょう?

僕がごくごく狭い範囲で物事を考えているからかもしれません。さきほど「3KM2」と言いましたが、これは「三キロ平方メートル」、つまり半径1キロの円の面積も意味しています。この範囲内なら、僕たちは自分の足だけで自由に行き来できます。これが僕にとって具体的なひとつの「町」のサイズ。その狭い範囲内で本当にワクワクする「価値」を探すことが、突き抜けたアイデアを生み出す近道ではないでしょうか。もし地方で何か新しいことを始めたいなら、まずは「どうすれば半径1キロを幸せにできるだろう?」と考えてみたらいいと思います。

─そういう人たちがたくさん生まれれば日本全体が幸せになりそうですね。

それが理想ですね。とはいえ、僕自身は日本全体のことにはあまり興味がありません。秋田の次は世界を見据えています。世界中を旅して、立ち寄った町で課題を解決していくような生き方にチャレンジしたい。やっぱり僕にとってはワクワクできるかどうかが最も大切な基準です。そうやって世界を周ったら最後は宇宙です。活性化する場所は月でしょうか。月でお餅をついて、それを商品化したら月も賑やかになると思いますよ(笑)。

企画:森谷 太一、菅野 秀和     写真:中里 楓     取材:立古 和智     協力:おむすびスタンドANDON

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武田昌大さん

株式会社kedama代表、合同会社ANDON共同代表、内閣府地域活性化伝道師。1985年秋田県生まれ。大学卒業後、大手ゲーム会社に勤務する傍ら、若手米農家集団「トラ男」を結成。2011年、ゲーム会社を退職し、株式会社kedamaを設立。米のネット販売サイトtorao.jpとtoraofamily.comを運営する。2015年には古民家を利用した新ビジネス「シェアビレッジ」をスタート。2016年には内閣府が認定する地域活性化伝道師に選ばれる。NHKクローズアップ現代など多数メディアに出演し、全国各地で地方活性化に関する講演活動も行う。

 

●トラ男: http://www.torao.jp/
●トラ男一家 –toraofamily-:http://toraofamily.com/
●シェアビレッジ:http://sharevillage.jp/
●おむすびスタンドANDON:https://andon.shop/

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